AI時代のWeb制作と、これからのホームページの価格について
2026年7月、TODACCIOが開発・提供している小規模事業者向けホームページサービス「T-ROOM」は、初期導入費を0円にしました。

もちろん、ホームページを作ること自体に価値がなくなったわけではありません。
設計やデザイン、文章の整理、写真の選定、コーディング、スマートフォン対応、公開後の確認など、今も人が判断しなければならない仕事はたくさんあります。
それでも初期導入費をなくすことにしたのは、AIの進化によって、Web制作にかかる時間と、料金の前提そのものが変わり始めていると感じたからです。
特にアメリカ市場では顕著で、ビックリする状況が生まれているようです。
AIによって、Web制作の工数は大きく変わった
これまでのWeb制作では、文章のたたき台を作る、ページ構成を考える、コードを書く、表示の不具合を調べるといった作業に、多くの時間が必要でした。
現在は、生成AIやコード生成ツールを活用することで、これらの作業の一部を大幅に短縮できます。
以前なら数時間かかっていた下準備が、数十分で終わることもあります。
コードの記述や修正、文章案の作成、情報整理など、AIが得意とする範囲は急速に広がっています。
ただし、AIに指示を出せば、そのまま完成するわけではありません。
事業者ごとの強みを理解すること、必要な情報を見極めること、デザインを整えること、生成されたコードや文章が正しいか確認することは、今も制作者の役割です。
AIによってなくなったのは「専門性」ではなく、専門家が手を動かす時間の一部です。
だからこそ、その短縮された時間を料金へどう反映するかを考える必要があると思いました。

海外では「作業時間で請求すること」の限界が語られている
アメリカを中心とした専門サービス業では、AIによって作業時間が短くなるなか、従来の時間単価や人日計算を続けることの矛盾が表面化しています。
仕事を効率化し、早く高品質な成果を出すほど、請求できる作業時間が減ってしまうからです。
そのため、海外のコンサルティング業界などでは、時間に対して料金を設定する方法から、成果や提供価値、月額契約を基準とした価格体系への移行が進められています。AIの普及によって、時間課金型のサービスが縮小し、サブスクリプション型や成果連動型の価格を模索する企業も出てきています。
Web制作も同じ方向へ進んでいく可能性があります。
テンプレートへの文章や画像の流し込み、基本的なコードの作成、単純なページ量産などは、今後ますます自動化されていくでしょう。
一方で、事業を理解し、何を伝えるべきかを整理し、公開後の集客や運用まで設計する仕事は、簡単には自動化できません。
これからは「何時間かけて作ったか」よりも、
- 事業の魅力が正しく伝わるか
- お客様が必要な情報へ迷わずたどり着けるか
- 公開後も無理なく更新できるか
- 問い合わせや来店につながるか
- 長く安全に運用できるか
といった部分が、より重要になると考えています。
Web制作会社が高すぎる、と言いたいわけではない
ここは誤解のないように書いておきたいところです。
Web制作会社の料金には、制作作業だけでなく、打ち合わせ、進行管理、品質管理、修正対応、人件費、事務所費用、営業費用など、さまざまなコストが含まれています。
複数人のチームで品質を担保する会社と、個人で開発・運営しているTODACCIOでは、必要な経費も提供できる範囲も違います。
そのため、単純に「AIを使っているのだから、Web制作はすべて安くなるべきだ」とは考えていません。
高度なブランディング、大規模なシステム開発、複雑な予約・決済機能、綿密なマーケティング戦略が必要な案件には、これまでどおり相応の費用が必要です。
ただし、一般的な小規模事業者のホームページまで、すべて従来と同じ作り方、同じチーム編成、同じ料金体系で提供し続ける必要があるのか。
そこには見直す余地があると感じています。
価格が崩れる前に、自分から変える
現在の日本では、AIによって制作工程が短縮されていても、Web制作の価格にはまだ大きな変化が見られないように感じます。
しかし、クライアント側も少しずつ、AIやノーコードツール、Webサイト生成サービスの存在を知り始めています。
今後は、
- 「AIを使えば、もっと早く作れるのではないか」
- 「この料金は、何に対して支払っているのか」
- 「自分たちでも作れる部分と、専門家に頼む部分の違いは何か」
と問われる機会が増えていくはずです。
私は、この変化が起きてから慌てて価格を下げるのではなく、自分から先に仕組みを変えたいと考えました。
個人で開発し、固定費を抑え、AIを制作工程へ取り入れているからこそ、その効率化によって生まれた余白を、利用者へ還元できるのではないか。
それが、T-ROOMの初期導入費を0円にした大きな理由です。
無料にしたのは「ホームページの価値」ではない
初期導入費0円と聞くと、「簡単なテンプレートへ情報を入れるだけなのでは」と思われるかもしれません。
T-ROOMでは、事業内容を伺い、掲載する情報を整理し、デザインや文章を調整したうえでホームページを構築します。
テンプレートではなくフルデザインです。住宅に例えると完全設計です。
また、公開後には、事業者自身がお知らせや実績を更新できる専用の投稿環境を用意しています。
AIによるタイトル案の作成や文章のリライト、検索結果に表示される説明文の作成など、更新を続けるための支援機能も組み込んでいます。
T-ROOMは、Next.jsとヘッドレスCMSを基盤として、表示速度、更新性、画像の最適化、SEOの基本設定などをひとつの仕組みにまとめています。
初期導入費を0円にできるのは、何もしていないからではありません。
開発した共通基盤を活用し、案件ごとに同じ作業を最初から繰り返さなくてもよい仕組みにしたからです。
つまり、価値をなくしたのではなく、制作方法を変えました。
初期費用ではなく、継続して使われることを大切にしたい
従来のWeb制作では、ホームページを納品した時点で、大部分の売上が確定する形が一般的でした。
しかし、この方法では、制作側が「完成させること」を優先し、公開後に本当に更新されているか、事業に役立っているかが二の次になりやすいという問題があります。
T-ROOMでは、初期制作で大きな費用をいただくのではなく、月額で管理・運用を支える形にしています。
そのためTODACCIOにとっても、ホームページが長く使われること、更新しやすいこと、事業者にとって役に立ち続けることが重要になります。
作って終わりではなく、一緒に育てる。
T-ROOMという名前には、そのような考えも込めています。

0円で対応できる範囲には限りがあります
初期導入費0円で提供するのは、T-ROOMの基本仕様に沿ったシンプルなホームページです。
すべてのWeb制作を無料で請け負うという意味ではありません。
ページ数の追加、独自機能の開発、大規模な情報設計、予約や決済システム、特別な撮影やロゴ制作など、基本仕様を超える内容については、別途費用をご相談します。
共通化できる部分は効率化して安くする。
事業者ごとに専門的な対応が必要な部分には、必要な費用をいただく。
その線引きを明確にすることで、無理なく継続できるサービスにしたいと考えています。
AI時代に、人が担当すべき仕事
AIが発達するほど、人の仕事がすべてなくなるとは考えていません。
むしろ、何をAIへ任せ、何を人が判断するかが重要になります。
その店にしかない空気を感じること。
経営者が大切にしていることを聞くこと。
言葉になっていない魅力を見つけること。
掲載してよい情報と、掲載すべきでない情報を判断すること。
AIが作った文章やコードに責任を持つこと。
こうした仕事は、単純な生成ボタンだけでは完結しません。
AIによって作業時間を短縮しながら、人は事業を理解することや、伝え方を考えることへ、より多くの時間を使う。
それが、これからのWeb制作者の役割だと思っています。
小さな事業者にも、育てられるホームページを
地方の小さなお店や個人事業主にとって、数十万円から百万円規模のホームページ制作費は、決して小さな負担ではありません。
一方で、InstagramなどのSNSだけでは、営業時間、サービス内容、料金、所在地、事業者としての考え方などを、整理して伝えることが難しい場合があります。
ホームページは今も必要です。
ただし、作るために大きな費用をかけ、公開後は更新できずに止まってしまうホームページではなく、事業者自身が少しずつ情報を積み重ねられる場所であるべきだと考えています。
AIと新しいWeb技術によって制作工程を効率化し、導入時の負担を小さくする。
そして、人にしかできない相談や判断、公開後の運用を大切にする。
T-ROOMの初期導入費0円は、単なる値下げではありません。
AI時代のWeb制作に合わせて、価格と提供価値の置き場所を変えるための決断です。
TODACCIO自身も小さな個人事業者です。
だからこそ、小規模事業者が無理なく始められ、長く使い続けられるホームページの形を、これからも考えていきたいと思います。
